Posted by ぴんもや - 2009.07.22,Wed
君のことゆっさゆっさにし~てあ~げる~♪
「なあちょっと、誰かいない?」
いつも幹部連中をはじめメンバーがたむろしているリビングにひょいと顔を出して、兵部が声をかけた。
「ん?」
だらしなくソファに寝そべって漫画を読んでいた葉が顔を上げる。
「あれ、ひとり?」
「うん。どうしたんすか」
「ちょっと、パソコンの調子がおかしいんだよ。君分かる?」
「どうだろ。どうおかしいんだよ?」
「止まっちゃって動かない」
「フリーズしたんじゃないんすか?再起動してみれば?」
体を起こしながら言う葉に、兵部は大人げなく唇を尖らせて首を振った。
「だから動かないんだって、カーソルも」
「じゃあ強制終了かければ?」
「・・・故障したらどうするんだよ」
「そんなこと言われても」
ったく仕方ねーな、と、ぶつぶつ文句を言いながら葉は立ち上がり、兵部の背中を押して彼の部屋へと向かった。
兵部の部屋には何度も足を踏み入れているが、おとといから真木が出張でいないからか部屋は荒れ放題だった。
脱いだ服は脱ぎっぱなし、ベッドもぐちゃぐちゃ、何故か花瓶が割れて水が零れているのに拭こうとする努力の跡さえ見えない。まさにカオスである。
「なあ・・・あんたさー、もうちょっと、何とかなんねえの」
「だって面倒くさいんだもん。別に平気だけど」
「平気じゃねえよ兵器だよもはや」
突っ込みだかボケだから分からないせりふを吐きながら、床に転がっているコップや脱ぎ捨てられた服を踏まないように用心しつつ、テーブルの上のパソコンの元へと歩み寄った。
ザ・片づけられない男、という不名誉なネーミングをそっと上司兼養い親に送っておこう。
「これ?・・・て、あんた何見てんだ」
「何って動画だけど」
「いや・・・いいけどさ、別にさ。俺もたまに見るし、いやそれはいいんだけど何ていうか」
もごもごしながらモニタを眺め、マウスを動かして確かにカーソルも動かないことを確認する。
「何だよ」
「少佐もこういうの興味あんの?」
こういうの、とは動画の内容である。
そこに映っているのは、おそらくネットを使用したことがあるなら誰でも一度は名前を聞いたことがあるだろう有名な人工音声ソフト、のキャラクターだった。
長い緑色のツインテールが可愛らしい、少女のイラスト。何故か手にはネギ。ヘッドマイクをつけて歌っているところらしい。
「かわいいよねミク。ipodに色々曲入れちゃった」
「・・・ああ、うん。そう」
色々と言いたいことがあったが、頭の中でそれがうまくまとまらず、結局葉が発した言葉はそれだけだった。
このじじぃ、とも思ったがミクが可愛いのは同感なので、黙っておく。
きっと真木あたりなら、大人げない、とこっそり胸の中で呟いて終わりだろう。
(俺もちょっと大人になった)
「なあ、それよりこれ直る?今いいとこだったんだよ」
「強制終了」
「ええっ!?」
兵部が声を上げるのを遮るように手を伸ばし、葉はパソコンの電源を長押しして、切った。
ぶいーん、と音がして、しばらくすると電源が切れる。
「あああ・・・まだマイリス入れてないのに」
「知るかー!」
もうやだこんなボス、と呆れた溜息をつきながら、部屋の片づけを手伝えと言われる前にさっさと退散することにした。
数日後、今度はipodが動かなくなったと声をかけられることは、プレコグ能力者ですら予測できなかったらしい。
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