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Posted by - 2025.04.21,Mon
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Posted by ぴんもや - 2009.12.16,Wed
何が「昼下がり」なのかは誰にもわからない・・・。
いや嘘です、そのうち真木兵っぽくなるんだよきっと。
たぶん。

・・・・・・・おそらく。




 皆本が指定された会場へ出向くと、すでに講演会が終わったのかぞろぞろと大勢の人が集まりかけているところだった。披露宴会場のような大ホールにはおよそ300人はいるだろう、老若男女がそれぞれ立ち話をしていたり、コートを預けにロビーを右往左往している。小さな子供がいるのは家族連れなのだろうか。そもそも、ここにいる人々がエスパーなのか、パンドラなのか、それともまったく関係のないごく普通の人たちなのか分からなかった。目立つようなリミッターをつけている者はいないし、政府関係者や民間に案内を出したからと言って本当に招待を受けた人たちがいるかどうかは皆本には判断できないのだ。
 もう少し時間に余裕があれば誰が集っているか調べることができただろう。
 講演会には参加しなかったがパーティには参加している、という者たちもたくさんいるようだった。スーツか正装かで見分けはできる。着飾った子供たちは例外なくパーティのみの出席者だろう。ホールのあちらこちらにはクリスマスツリーが飾られており、電飾も華やかである。話し声の邪魔にならないように配慮されたオルゴールのようなクリスマスソングが流れていることに皆本はしばらくしてから気付いた。
「…あ」
 思わず声を上げる。視線の先に知った顔がちらほらと見えたからだ。
 ほっそりとしたパンツスーツ姿の長身の女性と、あまり似合わない畏まった格好でむすっとした表情の若い男が立っている。パンドラの幹部、紅葉と葉だ。ウェイトレスに交じってぎこちなくワインを配り歩いているマネキンもいる。おそらく九具津がどこかにいるのだろう。やはりパンドラのメンバーが紛れ込んでいるようだ。
(というより、そもそもこの大使館そのものがパンドラのメンバーで構成されているんだしな)
 そこにメンバー以外の人間が紛れ込んでいる、と言う方が正しいのかもしれない。だが皆本はパンドラのメンバーの顔をすべて知っているわけではないので、小さな子供や恰幅の良い上品な年配の紳士もそうなのかと問われば首を傾げるしかなかった。
 親睦会と銘打った立食パーティは、開始時間を5分過ぎてからマイクが入るぼん、という音で始まった。
 ステージ上にきっちりとスーツを着込んだ男がマイクを握って立っている。一見誰か分からなかったが、良く見ると「あの」マッスル大鎌であった。いつもの悪趣味な格好やサングラスをかけていないともはや別人である。
 簡単な挨拶を述べながら、マッスルの視線が皆本とぶつかった。思わず半歩後ずさる皆本を、マッスルはにやりと笑いながら眺めている。ぞぞ、と背筋が寒くなったが、まさかこの場で襲ってくるようなことはないだろう。
 短く歓迎の言葉を終わらせると、あとはご自由に、という実にあっさりとした、やる気のない親睦会となった。それぞれが皿やグラスを手に思い思いしゃべったり食べたり飲んだりしている。
「これじゃあ偵察というか、ただの場違いな人みたいだな僕」
 うんざりとため息をついて、とりあえず全体を眺められるいい場所はないかと視線をめぐらせた。
 いい具合に、ホールの壁にそってソファが点在している。皆本は空いているソファへと歩み寄り腰を下ろした。
 ここで何かが起きるのだろうか。いや、今やロビエトの駐日代表という立場を手に入れたパンドラがここで騒ぎを起こすとは思えない。ならばせめて、この場にいる「関係者」の顔を記憶にとどめておこうと人間観察を始める。これだけ人が大勢いればまじまじと客たちを観察していても目立たないだろう。
「どうぞ」
 ふいに目の前に赤い液体の入ったワイングラスを差し出されて、皆本ははっと顔を上げた。
 前に立っていたのはぞくりと鳥肌がたつほどの色香をたたえた美しい女性だった。
 きらきらと輝く銀色の髪をくるくる巻いて、肩や背中に流している。スレンダーな体を漆黒のロングドレスで覆って、くっきりと浮いた鎖骨や真っ白な肌がのぞいていた。どこか退廃的な香りを漂わせながら、女は赤い唇で笑みを浮かべている。
「・・・・・・・・・・・・ど、どうも」
 しどろもどろに答えてグラスを受け取る。
 柏木に見せてもらった写真の人物だ。まさかこんなにあっさり会えるとは思わなかった。
 彼女が、強力なエスパーでありロビエトのスパイというのなら、バベルの職員である自分を避けるか遠巻きに観察するだろう、という予測があっさり外れる。
 自分がここへきていることはパンドラやロビエト大使館関係者の間ではすでに知れ渡っているだろう。局長が堂々とバベルの名で参加申請をしているから間違いない。
 では、接触してきたその目的とは?
「退屈そうですね。隣りに座ってもよろしいですか?」
「は、はい。どうぞ」
 三人は余裕で座れるだろうソファの端に座っていた皆本だったが、心持ち体をずらしてさらにすみっこへと寄せる。女は小さくうなずいて(まるで女王様のような態度だが似合っているので腹も立たない)皆本の隣りに座った。肩が触れるか触れないかといった際どい距離だ。ここまで近づく必要はないと思うのだが。
 女はどぎまぎしている皆本のことなど何ら気にはしない様子で、通りかかったボーイからグラスを受け取ると細い指で掴んで持ち上げた。
 パーティに出席するにはあまりに飾りを排したそっけないドレスではあるが、銀色の髪や白い肌そのものが彼女の美しさを引き立てている。きっとふわふわひらひらのドレスを着るよりも真っ黒なドレスが一番似合うのだろう、と皆本は分析してみた。動作のひとつひとつが上品で、かつ人に傅かれることに慣れているような、堂々とした雰囲気を放っている。
 じっと見つめてしまっていた皆本を、女がちらりと見返して楽しそうに声をたてずに笑った。
 慌てて視線を外し、咳払いをする。顔が熱い。
 遠くでこちらを見ている男がいることに、皆本はまだ気づいていなかった。
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